デザインレシピ:届く伝わるデザインを

 斬新さ、とんがったもの、時代の先をいくもの、そんなもの(デザイン)ばかりを求めていた時代がありました。
 でも今必要なのは、奇をてらわず、見やすい、わかりやすい、子どもでも、高齢者でも、ハンディキャップを持つ人にもしっかりと伝わるデザインのカタチです。

 メディアデザインでは「届く!=選ばれる・読まれるデザイン」と、より多くの人に伝わりやすい「伝わる!=ユニバーサルデザイン」を両立させる方法の学びをサポートするサイト「届く!伝わる!デザインレシピ」を立ち上げました。
届く!伝わる!デザインレシピ
 私たちメディアデザインが持っている広告や編集の知識と技術を活かすことで、「手に取ってもらえて・読んでもらえるデザイン」を実現することができます。設立以来10年以上、メディアを作るかたわら、多くの方々にメディアの作り方をお教えしてきました。その内容をまとめたのが、「届く!伝わる!デザインレシピ」です。
 どうぞあなたのメディア作りに「届く!伝わる!デザインレシピ」をお役立てください。

ピンクのバラ?/カラーユニバーサルデザインって何?(2)

誰もが同じに見えてはいない

気持ちの良い季節になり、あちらこちらでバラの花が咲きはじめ、赤や白、オレンジやピンクとさまざまな彩りの賑わいを見せています。

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多くの人(一般型:C型の色覚特性を持つ人、日本人男性の約95%)にとってはピンクに見えるバラも、ほかの色覚特性を持つ人にとっては違って見えることがあります。

上の画像は、色のシミュレータという「様々な色覚特性を持つ人の色の見え方を体験するための色覚シミュレーションツール」を利用して、ピンクのバラを(C型、P型、D型、T型)それぞれの色覚型で見た様子をシミュレーションしたものです。

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黄色いバラではこのようになりました。

色覚型

NPO法人のカラーユニバーサルデザイン機構では、色覚特性について次のような用語で表しています。

従来の呼称
色覚を表す用語には「色覚異常者」「色盲(しきもう)」「色弱(しきじゃく)」「辨色不全」「色神」「色覚特性」「色覚障害者」などがあります。過去には差別的な使われ方をしたこともあり近年には差別感の少ない呼称が求められてきました。また行政などでは「色覚障害者」という言葉を使うことがありますが、障害者基本法や工業規格などでは「健常者」でも「障害者」でも「病者」でもなく宙に浮いた形となっている場合が見受けられます。

CUDOが提唱する新たな呼称
従来のように色覚を「正常」と「異常」に線引きして分けるのをやめ、C、P、D、T、A の5種類の色覚型で対等に扱うことを提唱しています(P型とD型はさらに強度と弱度に分かれます)。割合が最も多いC型を「一般色覚」と呼び、C型色覚以外を色の配慮の不十分な社会における弱者として「色・弱者(しきじゃくしゃ)」と呼んでいます。
  ーー色弱・色盲・色覚異常・色覚障害など色覚の呼称ーー
  http://www.cudo.jp/colorud/color_vision/designation

P型色覚(Protanope、日本人男性の約1.5%)

3種の錐体のうち赤い光を主に感じるL 錐体が無い人(P型強度) と、L錐体の分光感度がずれてM錐体と似通ってしまっている人(P型弱度) がいます。

D型色覚(Deuteranope、日本人男性の約3.5%)

緑の光を主に感じるM 錐体が無い人(D型強度)と、M錐体の分光感度がずれてL錐体と似通ってしまった人(D型弱度)がいます。

T型(Tritanope、十万人に1人以下≒0.001%)

青い光を主に感じるS錐体が無い人はT型です。

A型(Achromat、十万人に1人以下≒0.001%)

3種の錐体のうち1種類しか持たない人や、錐体が全く無く杆体しか持たない人はA型(Achromat)で、色を明暗でしか感じることができません。
P型とD型の遺伝子はX染色体にあるため男性で率が高く女性では数百人に1人ですが、T型とA型には男女の差はありません。

カラーユニバーサルデザイン

過去において「色盲(しきもう)」などと表現されていた色覚特性の違いですが、その違いを問わず、より多くの人に利用しやすい製品や施設・建築物、環境、サービス、情報を提供するという考え方を「カラーユニバーサルデザイン」と言います。

先ほどのNPO法人のカラーユニバーサルデザイン機構によると、カラーユニバーサルデザインでは次ような点に配慮する必要があります。

カラーユニバーサルデザインの3つのポイント
a. 出来るだけ多くの人に見分けやすい配色を選ぶ。
b.色を見分けにくい人にも情報が伝わるようにする。
c.色の名前を用いたコミュニケーションを可能にする。
  ーー色弱・色盲・色覚異常・色覚障害など色覚の呼称 ーー
  http://www.cudo.jp/colorud/CUD

色弱者の割合

全世界に2億人を超える色弱者がいると考えられていて、その割合はAB型の血液の男性に匹敵するほどです。
日本全体では約320万人以上で、男性の約20人に1人、女性の約500人に1人の割合で色弱者がいるとされています。

情報伝達の手段として、文字や音声とともに、画像やイラスト、映像が使用されています。そのなかにおいて「色」は感情や雰囲気を想起させ、状態を表したりする重要な役割を担っています。
しかし、一般色覚者にはこの役割を果たしているものの、色弱者にとっては十分ではないことがあります。

充電は完了した?

一例をあげてみます。
充電ランプの見え方
この画像は、スマートフォンの充電ランプの変化を色覚特性別に色のシミュレータでシミュレーションしてみたものです。
充電中は「赤」で、充電が完了すると「緑」に変わるランプですが、この違いが1型(P型)や2型(D型)の色覚特性の人には分かりにくいのです。

カラーユニバーサルデザインの重要性

このように色覚の多様性についての認知度はいまだに低く、カラーユニバーサルデザインが考慮されていない製品が多く存在しているために、必要な情報がうまく伝わらない事があります。
また、カラーユニバーサルデザインは色弱者のためだけの特殊なデザインではありません。色弱者にも配慮したデザインをすることは一般色覚者にとっても見やすいデザインとなり、カラーユニバーサルデザインは全ての人に価値があると言えます。

※注意
「色覚シミュレーション」は、色弱者(強度)の[色の見分けにくさ]を再現したものであり、色弱者が感じている色を完全に再現したものではありません。

カラーユニバーサルデザインって何?(1)

一般社団法人メディアデザインでは、メディアのユニバーサルデザインを研究し、実際に表現しようと取り組んでいます。
たとえば「カラーユニバーサルデザイン」については、パンフレットで次のように説明しました。

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さてさてメディアデザインのパンフレットは、カラーユニバーサルデザインになっているのでしょうか?
このお話の続きは「カラーユニバーサルデザインって何?(2)」をお楽しみに!