ワークショップ研究室 8(完)ワークショップで楽しく学ぶ

 このシリーズの最終回です。
 私は授業や講座で教えることを仕事にしています。
 メディアデザインでも、たくさんのワークショップを企画・実行してきました。
 しかし私は自分が、まず第一に「学ぶ人」でありたいと考えています。
 それだけ「学び」は楽しく、魅力に溢れていると思うのです。

 私自身はおもに、本、旅、人に学んできましたし、これからもそうありたいと思っています。
 本には子どもの時から親しみ、事典やマンガを含む、さまざまな本に学んでできました。
 旅は高校時代から一人で出かけることを好み、身をもって世の中の多様さを知りました。また旅先で読んだ本や旅先で会った人たちにも、多くのことを学びました。
 人づきあいは今でも苦手ですが、大学で優れた師や心を開ける友人たちと出会うことができたおかげでだいぶ変わりました。本当に運がよかったと思っています。

 人の間で、体験することや自分の頭で考えること、そして他の人とそれを共有したり摺り合わせてみることの楽しさは、やはり大学で学びました。
 30年以上前の当時、ワークショップや学生主体型授業という言葉はありませんでした。しかしたまたま入った先が、まさにそうした考え方を、大きく取り入れた大学だったのです。

 もちろんレクチャーにも多くのことを学びましたし、高校まで学校で身につけたことにも大いに意味があったと思っています。
 また、レクチャーでも徒弟制度でも、学ぶ人は学ぶし学ばない人は学ばない、という考えもあるでしょう。
 それでもなお私は、ワークショップ型の教育に期待しています。

 レクチャーや読書による学びで、私たちは高いところに行くことができます。
 旅は世界を広げますが、現代ではインターネットで得られる情報や交流のおかげで、私たちは無限とも言える広がりを手に入れました。
 そしてワークショップをはじめとする体験的な学びによって、私たちは自分自身や他者との関係の深みへと降りて行くことができます。
 高さと深さ、そして広がり。
 学びをこうした3次元的なイメージやバランスでとらえることは、かなり有効ではないでしょうか。

 楽しんで学ぶ。
 他の人と交わって学ぶ。
 そして変わる。
 そんなワークショップが、特別な教育の形ではなく、もっと当り前になりますように。

 以上が、私なりの「ワークショップの研究」です。
 やや個人の体験に引きつけ過ぎたかもしれませんが、お読みになった方に何らかのヒントになれば幸いです。
(大泉浩一)
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