ふつうは読む力・書く力・聞く力・話す力の4つを、コミュニケーション能力と言います。
言葉を使って、他者と情報や意思、感情、そして価値観を伝え合う能力です。
しかし言葉を使うバーバルコミュニケーションだけでなく、表情やしぐさといったノンバーバルコミュニケーションも大切です。
『人は見た目が9割』という本もヒットしました(竹内一郎/2005年/新潮新書)。
ところが「コミュニケーション能力」という言葉は奥が深く、これでもまだ説明は十分ではありません。
たとえば私が授業でよく取り上げ、学生たちに検討を促すのは、
「他人と力を合わせる力」
や
「他者への想像力」
という説明です。
小学校から高校まで、ふつう「コミュニケーション」という授業はありません。
ところが採用にあたって、企業が最も重視する能力は「コミュニケーション能力」だそうです。*
第3次産業がメーンとなった現代の日本で生きていく(稼いでいく)ためには、しばしば「他者に勝てる競争力」以上に、「他者とコミュニケーションする力」が必要とされるのです。
しかも地域の顔見知りや同世代の仲良しとではない、まったくの「他者」との。
私は大学では、講義の名目にかかわらず「コミュニケーション能力の向上」を目的にして授業をしています。
「他人と力を合わせ」たり、「他者への想像力」をはたらかせたりすることは、決して簡単なことではありません。また、得意だとか苦手だとか言って済ませることはできないのが現実です。
「コミュニケーション能力偏重主義」への懐疑や、その問題点は否定しません。しかしここでは一度それを置いて、「コミュニケーション能力」を向上させる方法について考えてみます。
コミュニケーション能力を上げるにはどうすれば良いのでしょうか。
それは経験し、楽しみ、反省し、次の機会に生かせば良いのです。
知識を得たり他の人のやり方をまねるだけでは、表面的な力しかつきません。
それはおそらく現実の、突然訪れる、一回きりの場面ではほとんど役に立ちません。
「3 ワークショップのコミュニケーション促進機能」に、私はこう書きました。
〈自分のコミュニケーションのあり方の幅を広げられた場合、私たちはそれを「コミュニケーション能力が向上した」と言っても良いのではないかと思います。〉
「自分のコミュニケーションのあり方の幅を広げ」る、良い方法があります。
それは優れたファシリテーターの、良いワークショップに参加することです。
良いワークショップでは、経験、楽しみ、反省、次の機会に生かそうとする気持ちのすべてが得られます。
「次の機会に生かそうとする気持ち」は、特に大切です。
それはシンプルに、「他者とコミュニケーションをしようとする気持ち」と言い換えてもいいかもしれません。
競争で一番大切なことが「勝ちたいという気持ち」であるように、実はコミュニケーションで一番大切なことは「コミュニケーションしようとする気持ち」です。
また「勝ちたいという気持ち」を持ち続けることが大切なのと同じように、「コミュニケーションしようとする気持ち」を持ち続けることが大切なのです。
ワークショップで楽しく学ぶことは、私たちを励まし、コミュニケーションへの意欲を高め、自分が変わることへの恐れを和らげてくれます。
次は最終回。「ワークショップで楽しく学ぶ」と題して、教育系ワークショップについて考えてきたことのまとめを試みたいと思います。
*たとえば「経団連タイムス」2014年1月9日号の記事
新卒採用に関するアンケート調査結果公表
-「コミュニケーション能力」が1位/選考時重視の要素で10年連続
https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2014/0109_04.html
(大泉浩一)
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